今回は、遺産分割協議書の記載の際に債務をだれが負うのか指定できる

のかについて考えてみます。

前提として、遺産分割協議書の役割について検討すると、

さまざまな役割がありますが、

①相続人間で合意したことを書面にしてあとで紛争

が起きないように確定する意味合い。

②金融機関の解約手続きや不動産名義変更手続きの

添付書類としての役割。

③相続税の申告の際の添付書類としての役割。

この3つが主な遺産分割協議書の役割であると思います。

通常遺産分割というのは、プラスの財産を分けるための協議

を一般の方は考えますので、債務が誰か負うかはあまり問題と

なりません。そのため、

遺産分割協議書にだれが債務を負うか(借金を背負うか)について

は記載する必要がありません。

しかし、相続人間の感情的に債務の記載をした

方が良い場合もあります。

例えば、家業を継いだ長男がいて、サラリーマンをしている次男がいた場合、

全部の財産を長男が取得することにして、次男は何も相続しないというケースです。

これはよくある事例だと思います。

家族で自営業をしていた場合に、事業主となる者が全部財産を引き継いだ

方が良い場合も多いと思います。

この場合、「債務のすべてを長男が取得する」と一文をいれることによって、

次男は“借金も長男が負ってくれるのだからしょうがない”とプラスの財産が

与えられないことに納得するのです。

そのような意味で遺産分割協議書に債務の帰属を記載することは有効な手段です。

法的にいっても、相続人間では有効です。

ただし、お金を貸している債権者の立場から考えてみると

自由に債務についても分割されることは、納得がいかないこともあります。

債権者としてはきっちりと誰かが借入金を返してくれればそれでよいのですが、

返済をしてくれないことが予想されるときに、

一番お金のない相続人の方に債務を相続させるとの分割協議書を作られては

は困ってしまいます。

具体的には、長男は事業をしていてプラス財産は相続するが、債務は無職

の次男にさせるとの遺産分割協議書は、債権者を害します。

裁判などで争われた場合には、債務の記載の帰属に関しては、遺産分割協議

が無効となる可能性が高いです。(大判昭和5年12月4日、再判昭和34年

6月19日に債務は法定相続分での分割となる旨の趣旨の判例が出ています。)

結論としては、遺産分割協議書に記載する債務の分割協議の記載は、あくまで

相続人らの内部的な取り決めということとなります。

当事務所でも、債務の記載については書くことがありますが、それは、

相続人間の取り決めを記載したものという意味合いに限定された使い方となります。