相続制度について民法改正の前提となる法制審議会が1月16日に

民法改正要綱案を出したため、17日の新聞各紙に「配偶者を優遇」

「自宅に住み続けられる権利新設へ」などと見出しがありました。

相続の実務家の観点からすると、良い方向に向かっているのではという

印象を持ちました。

実際に施行されるまではまだ時間がかかりますが、特に東京などの

都市部では有効ではないかと思います。

新設された部分で特に注目すべき点は、居住権といういままでに

相続分野の法律上はなかった権利が新設されたことです。

遺産分割はどのように分けても相続人間で合意があれば自由

なのですが、民法には法定相続分という分割割合も明記されています。

これによると、亡くなった方の妻と子がいるパターンでは、妻が2分の1

、子が2分の1(子が二人いた場合、それぞれの子が4分の1ずつとなる)

です。

この規定は、改正が行われた後も変わらないです。

いままで問題となっていたのは、東京の都心部などで、

権利意識の高い相続人様(特に子)が多いため、

法定相続分はきっちりもらうとの考え方を持っている方がいるということです。

 「夫婦で済んでいた自宅には、母さんそのまま住んでいいよ。

ただし、そうすると家だけで父さんの遺産の2分の1の価値があるから、

現金は、すべて長男である自分に取り分があるよ。

民法という法律ではそうなっているんだよ。」

などと主張する子が、一定の数実際にいるのです。

それを避けるため、自宅を長男名義に移すと今度は、所有権が

長男にあるため、長男が自宅を売却してしまい、妻(長男からすると

母)の居住が確保されないという状況になります。

そこで、今回の制度は、自宅を相続する際に、自宅の価値を居住権と所有権

とに分離し、配偶者である妻に居住権を与え、その居住権の金銭的価値は、

所有権を取得するよりも低い金額で得ることができるというものです。

そうすると同じ2分の1の割合でも、現金や預貯金など金融資産を

妻が得る枠が残るので老後資金も確保できることになります。

ただし、居住権の金額をどのように算定するか明確に決まっていない

ところがあるので、おそらく実務で取り入れられるケースはしばらく

先になるのではないかと思います。

実務と法律で運用が異なるのはよくあることで、この二つを

一致できるようにしないといけません。

今後も、相続の実務家として、民法改正に注目していきたいと

思います。